友達の姉貴 〜女子大生リベンジ編〜
高校3年生になったとき、クラスメートに中性的なキレイな顔をした男子がいた。
「おまえが女だったら、オレ好きになっちゃうよ(笑)。おまえ、姉貴とかいねーの?」
「いるよ」 (*´Д`)……「えっ?」
「3つ上でさ、いま東京の大学行ってる」
(*´Д`)……「んっ?!」
「紹介!紹介!ショーかい!してーっ!
デートとかしてくれんのかな?(*´Д`) (*´Д`) (*´Д`)」
もはや“女子大生”という響きだけで飛びつく、単純明快な思春期男子である。
「は? あんなんでいいの?笑 じゃあ、今日帰ったらアネキに聞いてやるよw」
ボクは半分冗談、半分本気ながらも期待した。
ーーーーーーー数日後。
「アネキ、いいってよ」
キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
女子大生攻略、敗者復活戦の出場権ゲットである。
よく考えたら、ボクは彼のお姉さんの顔すら知らない。単に目の前の少年の顔から想像してみただけなのである。どの時点からか、ボクの目的は「かわいいお姉さんであるか」よりも、「“女子大生”であること」に焦点が絞られていたのだと思う。
ーーー
そのクラスメートの実家は、隣町で商店を営んでいた。隣町といっても、ボクの住む街との間には小高い山があり、トンネルを抜けた先なので、めったに訪ねる場所ではなかった。
なじみのない駅前から、彼の実家である商店を目指す。緊張しているのに、なぜか心は躍り、歩調は自然と速くなっていった。
「こんにちわぁ」
ボクは通りから店の中を覗き込んだ。顔は緊張でこわばっている気がした。店番はだれもいない。
「はあい」
店の一番奥の方から声がして、想像通りのかわいいお姉さんが微笑みながら出てきた。ボクの緊張度がマックスに達したとき、彼女の肩越しに、いたずらな笑みを浮かべたクラスメートの顔が見えた。
「よっ! ここすぐわかった?笑」
「うん」
スマホもグーグルマップもない時代である。ボクは駅前の商店街マップを何度も見返し、頭に焼き付けてここまで来たのだ。
しばらく3人で自己紹介がてら世間話をしたところで、彼が言った。
「じゃあ楽しんで来いよw」
彼のいたずらな笑みに見送られ、ボクは彼のアネキと店を後にした。
ーーー
行き先は決まっていた。この街には県内随一の有名な美術館がある。もちろんボクは美術などちっとも興味はない。だが、普段東京の大学に通う、田舎の高校生のボクからすれば雲の上のような女性を連れていくのに、この美術館以外の場所は思いつかなかった。
一通り美術館を見学したのち、美術館併設のレストランでランチを食べた。
何を食べて、どんな話をして、どんな振る舞いをしたか。今となっては記憶の彼方に消えてしまったが、それまでデートといえば映画を見て、マクドナルドでバーガーに食らいつくくらいしかしたことのないボクである。どんなデートだったか想像するだけでショボさが連想され、恥ずかしさがこみあげてくる。
少し遅めのランチだったので、レストランを出た頃にはいい時間になっていた。受験を控えた高校3年生、夕飯までには家に帰らないと母親が鬼と化す。デートに費やせるのは残り1〜2時間だったので、ボクらは美術館敷地内の庭園を散歩することにした。

彼女はとってもきれいな髪をしていた。
この辺りではあまり見ない都会的センスの服装で、キラキラと輝いていた。
終始微笑みながら、都会の生活の話をしてくれた。こんな状況であれば、田舎の高校生なら皆あせあせ(;’∀’)してしまうのだろうが、なぜかボクは落ち着いていた。それはきっと、去年の夏休みに出会ったウエイトレスのお姉さんのおかげだと思う。
「どうせ、ボクの気をもて遊んでるんだろっ・・・ヽ(`Д´)ノプンプン」
そんな風に、どこか斜に構えていたのかもしれない。
肩を並べて歩くと、自然と手が触れる。誰でも経験があるだろう。17歳の少年の手に、20歳の年上女性の指先が触れる。さすがに冷静を装っていたボクでも、これには心臓がドキドキした。鼓動が耳の内側から聞こえてくる、あの状態だ。
え?
さっきから一定のテンポで触れていた指先が、突然温かいものに包まれた。視線を落とさなくても、それが彼女の手であることはわかる。時が止まったような感じがして、顔がどんどん熱くなった。それ以降、ボクは無言で歩き続けた。
美術館を後にして、彼女の家に向かう間も手はつないだままだった。
次の角を曲がると彼女の実家兼商店がある、というところまで来たとき、彼女は手を離した。
「今日はありがとう! とっても楽しかったよ!」
手をつないだ後、一度も見ていなかった彼女の顔には笑みがあふれていた。
「うん、オレも。」
「今日はありがとう、じゃあまたね!」
ボクは歩き出した。さっき彼女が手を離した角のところまで来て振り返ると、店の前で彼女がニコニコしながらまだ手を振っていた。
ーーー
「楽しかったらしいじゃん!笑」
月曜日の朝、いたずらな笑みを浮かべてクラスメートが寄ってきた。
「うん、まあな。」
「アネキ、お前のこと気に入ってたよ(^^)」
「え、そう? それはうれしいな…」
ボクはなぜか喜べなかった。
女子大生と高校生の間には、恋愛ゲームにおいて圧倒的な力の差がある。そんな感覚に支配されていたから、きっとその先に進むのが怖かったのだと思う。大人の恋愛経験ゼロのウブな少年だったし(笑)。
以来、ことあるごとにクラスメートが言った。
「おまえ、いつ空いてんだよ? アネキがまた会いたいって言ってるぞ(^.^)」
「うん、あぁ・・・。でも受験勉強、そろそろエンジンかけないとだしな…」
結局、のらりくらりと逃げているうちに、クラスメートはお姉さんの話をしなくなった。
とても素敵なお姉さんだった、それは間違いない。でもボクは、さっきも言ったように、たぶん怖かったのだと思う。自分には不釣り合いな、あんなキラキラした人がまた会いたいなんて。きっと気を向かせて、こっちが本気になったとたんに、ぷいっと背を向けるに違いない。なんかそんな気がして。
『女子大生=あざとい』
そんな公式がボクの中に出来上がっていた。高校2年の夏休みの経験が、思いのほかボクの恋愛観に後ろ向きな影響を与えていたのかもしれない。
ーーー
次回からは、大学に入ってから一気に広がった世界と、そのせいでさらにややこしくなっていく私の話を書いてみようと思う。